こつこつ基礎医学日記

東北の医学生による日々の勉強の記録

胎児の血液循環

・胎児ヘモグロビン

 妊娠時は母体の心拍出量が40%ほど増大する。胎児の持つ胎児ヘモグロビン(Hbf)は、成人ヘモグロビン(Hba)よりも酸素親和性が高く、母体からの酸素の受け取りに都合がよい。

 

・卵円孔

 胎児の血液は、胎盤からの動脈血を心臓へ運ぶ臍静脈から、肝臓の静脈管を通り、下大静脈と合流して右心房へと入る。胎児期には右心房と左心房の間に卵円孔という穴が空いており、右心房に流れた血液は左心房へと送られ、動脈血と静脈血が混ざった血液が、左心室→全身へと流れていく。

 

 生後、胎盤からの循環路が閉じると新生児は窒息状態となり、呼吸中枢が刺激されて大きな呼吸運動が起きる。このときに胸腔内圧が陰圧となり、肺動脈圧が低下し、肺循環に血液が流入する。このため、左心房圧が上昇して1次、2次中隔が密着して卵円孔が閉鎖する。閉鎖後の卵円孔は卵円窩と呼ばれる。

 

・動脈管

また、上大静脈からの静脈血は、右心房→右心室→肺動脈の経路を通るが、胎児では肺動脈幹に大動脈弓との連絡通路(動脈管)ができている、肺動脈圧は大動脈圧よりも高く、静脈血が大動脈弓に送られる。このように、肺呼吸を行わない胎児では、肺循環がほとんどおこっていない。動脈管は生後数分で閉鎖し、動脈管策として残存する。

 

頭頚部に血液を送る腕頭動脈、総頚動脈、鎖骨下動脈においては酸素の豊富な動脈血が大動脈から供給されているが、下半身に送られる血液には、動脈管策から送られる酸素濃度の低い静脈血が混じっている。胎児の下半身が上半身に比べて未発達なのは、このような胎児期の血流が要因とされている。