こつこつ基礎医学日記

東北の医学生による日々の勉強の記録

微小循環とは何か?

微小循環

細動脈の末梢から毛細血管に分かれ、再び集まって細静脈の末梢に至るまでの領域で起こる、組織との物質交換のこと。

多数の細胞からなる組織が、水の限られた環境の中で代謝を行うには、

①組織内に細かな通路を作り、単純拡散に頼る距離を短くし、広範囲に拡散を行う

②通路内の環境液が絶えず入れ替わり、物質の濃度差の低下を防ぐ――という条件が必要となる。

人間では毛細血管で起きる微小循環と、毛細血管への血流を調節する細動静脈の存在により、①②の条件を維持している。微小循環は、内部環境の恒常性維持のために最も重要な機構で、循環系の本質といえる。心臓、動静脈系は、血流を微小循環領域に供給するための補助器官に過ぎない。

 

スターリングの仮説

 微小循環を支える、毛細血管壁でのろ過―再吸収についての考え方である。スターリングの仮説では「毛細血管壁を通じての、間質への水分の移動方向と移動速度は、毛細血管内外の静水圧、膠質浸透圧、ろ過膜としての管壁の性質に依存する」としている。人間の正常な浸透圧は0.3 Osmol

 

それぞれの代表的な値から血管のろ過圧を考える。

動脈側の⽑細⾎管静⽔圧(血管→間質の力、血流によって与えられる)…35mmHg

静脈側の⽑細⾎管静⽔圧(同上)…16mmHg

血漿膠質浸透圧(血中アルブミンなどのタンパク質による浸透圧、間質→血管の力)=26mmHg

間質液浸透圧(間質液中のタンパク質による浸透圧)…1mmHg

組織間液の膠質浸透圧…0mmHg

 

これらから濾過圧はどのように求められるか

濾過圧=(⽑細⾎管の濾過係数)[{(⽑細⾎管の静⽔圧)-(組織間の静⽔圧)}]-[{(⾎漿膠質浸透

)-(組織間液の膠質浸透圧)}]で求められる。

 

ろ過係数は1とすると

動脈側では

濾過圧=35-26110mmHgとなり、血管から水が出ていく

静脈側では

濾過圧=16-26-1-9mmHgとなり、血管内に水が取り込まれる。

 

膠質浸透圧を作るアルブミンは肝臓で作られるため、肝硬変では水の吸収が抑制されて浮腫や、腹水が出る。

 

ドナン平衡

ある種のイオンに対して透過性を持たない半透膜によって隔てられている時、片側にタンパク質のような高分子電解質が存在すると、膜の両側でのイオン濃度に差があるまま化学平衡に達すること。体内の様々な浸透圧形成にドナン平衡が寄与している。

 生体内のカリウムイオン、クロライドイオンのドナン平衡を考える。半透膜の片側に負電荷をもったタンパク質(アルブミン)などが存在した場合、カリウムイオンはたんぱく質のある側へ引き寄せられる。これに伴ってカリウムイオンの濃度勾配が形成される。カリウムの濃度勾配ができると、電気的中性側に従ってクロライドイオンの濃度勾配も形成される。

 ドナン平衡が成り立っている時、「[K(1)]×[Cl(1)]=[K(2)]×[Cl(2)]つまり、「細胞内外のカリウムイオンと塩化物イオンの積は常に一定」という関係が成り立つ。電気的中性則より、タンパク質の存在しない方では、、[K+]=[Cl-]が成立する。この場合、もう一方(タンパク質が存在する方)のイオン総濃度は、存在しない方よりも必ず高くなる(数学的に必ずこうなる)。これにより、膜を介したイオン濃度の差が形成され、電位差と浸透圧が形成される。

 

参考資料:標準生理学第7版、P.33602609